楽園
鬱血 今にも破裂しそうな路地裏の猫の断末魔の足元
昨日の新聞と曇天の足音 「早く帰らないと」夏の事 父さんと冷たくなった子供
冷凍庫の中 業務用食用人肉を食い散らかすホームレス
誰も咎めず というか我関せず
眠らずに食料を探す 飢餓 暴力 感情は無く
生きるでもなく死ぬでもなく ただ寿命を待つ
他人事が裏返った なんだこれが平和の行く末か
よくわかった悪かった 「誰か助けて」の誰かは居なくなった
願った どうか最期は神様 私たちに楽園を
愛や希望や救いを詠う詩人は墓場へ 書物はすべて燃やされ 音楽は絶え
万年曇天の下 右倣え 息も絶え絶え 弱い奴らはゴミ箱へ
これが街のカルテ 書き連ねる断片
灰になった憧憬 何処やったっけ 到底見えそうにない晴天
いつの間に僕ら バカでかい幽霊船に
やがて人口は400人 秩序皆無
この手に握りしめる刃物に映ったのは化け物
ほら歌ってよ希望 書いてよ桃源郷を 見てよあの花を 夏なのに寒そう
他人事が裏返った なんだこれが平和の行く末か
よくわかった 悪かった 金木犀香る日向を思い出す
あと一度 あと一度でいい 死ぬ前にもう一度でいい
心から笑ってみたい
朝方 独り走る 枯れたひまわり畑
村で追いはぎ 雑草を食らい 意識を失った2033年に
食用人肉は尽きて 人間から逃げて たどり着いた浜辺に人骨は積みあがって
海が眩しくって 海が眩しくって 今更悲しくって 今更悲しくって
他人事が裏返った 凶器は転移するがん細胞だ
よくわかった 悪かった 助けてなんて言わないから
だからどうか最期は どうか最期だけは 楽園を私たちに
他人事が裏返った なんだこれが平和の行く末か
よくわかった 悪かった だが争いは絶えない
死に際にお祈り いない神様にアイロニ―
最後に間違い 楽園を私たちに
似たり寄ったりの歴史 いつまでも繰り返し
嬲り殺し 騙しだまし 美しい血液
もうわかった 悪かった 助けてなんて言わないから
神様最期だけはどうか 楽園を私たちに


